2020/01/07

 珈琲の器




cowry coffeeをオープンした時から珈琲のカップは柳宗理デザインのシンプルなカップ&ソーサーを使っていました。

お店をオープンするときにどんな器にするかとてもとても悩んでいたのですが、
当時はまだどんな珈琲をつくりたいかということも定まっていない状況で作家さんに器をお願いするということにも踏み切れず、形として飽きのこない美しさを感じる柳宗理さんのカップを揃えました。
お店をオープンして6年の間、珈琲を淹れながらどんな器が珈琲をより美しく捉えることができるのかとずっと考えていました。
4年ほど前に陶芸家の清水善行さんに珈琲の器の制作をお願いさせて頂いたのですが、その時もまだどんな形が良いのかイメージができていないままお願いをしてしまい具体的な形には至らず時間が過ぎ、漆の作家さんに相談させて頂いたり色々な方に相談にのって頂いたりと考察する時間が過ぎていきました。
そして少しずつ珈琲の器へのイメージが見えてきて取手のないお抹茶茶碗のような珈琲の器を求めるようになりました。

そこで清水善行さんが長年研究されておられる李朝の祭器の造形から制作された作品を去年の展覧会で見せて頂き求めていました珈琲の器と一致しまして今回、制作をお願いさせて頂きました。(実はこの形に至るまでに別の形で制作して頂いたカップもありました、しかし形はとても美しいのですが何か頭の中のイメージと実際に使ってみると合わないところがありましてまた悩む日々が続き、そんなところにこの祭器の器と出会い制作をお願いさせていただくことになりました。)






清水善行さんの白磁はガス窯でじっくりと時間をかけて焚かれた焼き物です。
器の表情はとても美しくなんとも言葉では伝えきれない深みのある質感です。

この器は高台が高く重みがあり器の形状が丸みを帯びていますのでワイングラスのような効果があり珈琲の香りがより鮮明に感じ取れます。
口当たりがとても優しく厚みがありますので深煎りの珈琲がよりぽってりと重厚においしく感じていただけるような器です。
 

 
 
 
李朝祭器 
李朝陶磁器の特徴は、祭器と呼ばれる様々な形状の器があります。
李朝時代は儒教が浸透していた時代です。
儒教が庶民の間にも浸透していき祭祀が一般化されるとともに祭器の需要が増え、17世紀頃からの民窯(一般民衆向けに焼かれた陶磁器)は李朝独特の丸みある柔らかい造形が生まれてきたといわれています。
その儒教の最も重要な行事が祭祀であり、それらに使用されていた器が祭器です。

祭祀とは神々や先祖を祭ること。祭典。まつり。のことです。
祭器は特別な存在や時間に使われていた器というように考えられます。

日常の珈琲の時間を少しだけ特別な時間の気分に感じて頂けましたらという想いで祭器をルーツとする器でお客様をおもてなしできましたら幸いです。




数に限りはございますが、器の販売もさせて頂きます。
お値段は5500円(税込)です。